あかんべえ

おりんの両親が開いた料理屋「ふね屋」の宴席に、どこからともなく抜き身の刀が現れた。成仏できずに「ふね屋」にいるお化け・おどろ髪の仕業だった。しかし、客たちに見えたのは暴れる刀だけ。お化けの姿を見ることができたのは、おりん一人。騒動の噂は深川一帯を駆け巡る。しかし、これでは終わらなかった。お化けはおどろ髪だけではなかったのである。
なぜ「ふね屋」には、もののけたちが集うのか。なぜおりんにはお化けが見えるのか。調べていくうちに、30年前の恐ろしい事件が浮かび上がり……。死霊を見てしまう人間の心の闇に鋭く迫りつつ、物語は感動のクライマックスへ。怖くて、面白くて、可愛い物語のラスト100ページは、涙なくして語れない。オーソドックスな時代小説を思わせる始まりだが、物語はミステリーに、ファンタジーへと変化する。ストーリー・テラー宮部みゆきが、その技を遺憾なく発揮した、最高の時代サスペンス・ファンタジー

おもしろかった!宮部みゆきはこの本でちょうど10冊目だけど、その中でダントツで一番気に入った。まぁこういうエンターテイメント作品はどこが良いというより「波長が合ったから」だろうけど、自分に合う本って本当に貴重。2章以降止めたくても止まらなくて一気に読まされてしまった。楽しかった!

話の舞台は江戸の深川。おりんの両親が新しく開いた料理屋は、なんとお化け屋敷だった・・・という風に始まり、そこからどんどん広がってホラー&ミステリーになって大事件に繋がっていくという筋。おりんと「お化けさん」たちの関係が『天井うらのふしぎな友だち』にそっくり! その辺りの設定や雰囲気は本当にファンタジーみたいで変わってる。ファンタジックなお化けのままで終わらず、生身の人間も亡者もみんなそれぞれ事情を抱えていて、独特のキャラで・・・というのが宮部みゆきらしいと思った。『あかんべえ』ってタイトルは内容にピッタリだけど、表紙は合ってないのでは・・・。