ローマ帽子の謎読了

<内容>
衆人環視のローマ劇場の中で、突然、死体となって発見された正装の弁護士! シルクハットが紛失していることを唯一の手がかりに、名探偵エラリー・クイーンの苦心惨憺たる活躍が始まる。その名前を一躍、推理小説界のスターダムに押し上げて、ヴァン・ダインと名声を競わせるにいたった記念すべき処女長編。さすがエラリーの推理は、後日あるを思わせる本格推理の傑作である。(文庫の紹介文より)

うーん。トリックや事件の真相は確かになかなか良い。なるほど、と納得できるし、意外性も十分だし、最後まで真相が読めなかった。でも、設定が古くて笑えた。動機が黒人の血が混ざっている事をネタに強請られたからだなんて、時代がかってるにもほどがある。(^^; 同じ古典ミステリーでも、アガサ・クリスティーの本は怨恨、恋愛関係や遺産問題など、いつの時代も変わらないものが動機になってることが多いんだけど・・・読みながら、これがエラリー・クイーンか、と思った。帽子の件も、「観劇に行く時は正装にシルクハットで」という決まりが守られていた時代だからこそ、成り立ったわけだし。それはそれで逆に面白かったけど、時代ものとしての印象の方がずっと強いというのは、ミステリーとしてはどうなんだろう。警察の仕事の様子や、端々に現れる当時の風俗習慣などはおもしろかった。アガサ・クリスティーがもっと深い、人間性を描くのが上手なのと対照的に、当時の空気が伝わってくるような本だった。
キャラクターは良かった!「本の虫」でマイペースな自由人エラリーと、警察機構の中の大物・クイーン警視を中心に、召使の少年ジェーナ、クイーンの仲間や部下たちなどが生き生きしていて。その辺の楽しさがあるからこそ、最後までちゃんと読めたのかもしれない。