震える岩:霊験お初捕物控

内容(「BOOK」データベースより)
ふつうの人間にはない不思議な力を持つ「姉妹屋」お初。南町奉行根岸肥前守に命じられた優男の古沢右京之介と、深川で騒ぎとなった「死人憑き」を調べ始める。謎を追うお初たちの前に百年前に起きた赤穂浪士討ち入りが…。「捕物帳」にニュー・ヒロイン誕生!人気作家が贈る時代ミステリーの傑作長編。

おもしろかった〜!時代ものは最初とっつきにくい場合が多いけど、これは初めから抵抗感ゼロの読みやすいミステリーだった。テレビ時代劇でお馴染みの小道具やお役目方が勢ぞろいで楽しい。キャラクターも良かった。特に主人公のお初!いいな〜、こういう子大好き。16歳でちゃんと自分の役割を持って、働いているんだね〜。

舞台は19世紀始めの江戸。お初は日本橋の近くの一膳飯屋「姉妹屋」を兄嫁のおよしと一緒に切り盛りしている、筋金入りの町娘。兄の六蔵は岡っ引きで、姉妹屋を手伝う傍ら自分の特殊な力を兄の仕事に役立てているという設定。「死人憑き」について調べているうちに、さらに新たな事件が起こり、背景が「100年前の赤穂浪士の討ち入り」に繋がって、事件は意外な方向へ。赤穂浪士の討ち入りが事件のカギになっているので、その部分は「作り物ではない史実」を調べるお初と右京之介の目で、かなり詳しく描かれている。

時代考証がどこまで正しいのかわからないけれど、読んでいて江戸の下町が本当にある町のように思えたというのはスゴイ。宮部みゆきという作家は、その気になればゾッとするほど怖い話も書ける人だと思うけど、この本はその描写力が全部江戸の町を描く方向に向かっているみたいだった。
六蔵とお初の上司である根岸肥前守鎮衛という人は、大岡越前守忠相、遠山金四郎景元(金さん)と並んで歴史的に有名な町奉行。舞台設定はもろ時代劇の「遠山の金さん」とか「大岡越前」の世界なので、このあたりが好きな人は極彩色のリアルビジョンで読めるはず。ただ敵が霊魂だという話の性質上、出てくる江戸の町の人たちはみんな良い人ばかりなので、「おぬしも悪よのう」はなかったけど。(笑