幻色江戸ごよみ

<収録作品・内容紹介>
『小袖の手』『首吊り御本尊』『神無月』『侘介の花』『紙吹雪』
盆市で大工が拾った迷子の男の子。迷子札を頼りに家を訪ねると、父親はすでに亡く、そこにいた子は母と共に行方知れずだが、迷子の子とは違うという・・・『まひごのしるべ』より。不器量で大女のお信が、評判の美男子に見そめられた。その理由とは、あら恐ろしや・・・『器量のぞみ』より。下町の人情と怪異を四季折々にたどる12編。切なく、心暖まるミヤベ・ワールドの新境地!

<感想>
貧乏長屋に住まう人々や、奉公に出された水呑み百姓の末娘など、江戸の町の下層にいる人たちの話を集めた本。どの話も江戸に住むある人物の人生を切り取って見せている。一番印象に残った話は『器量のぞみ』。目が覚めるほどの不器量な娘と幽霊の話なのだが、思わずジーンとしたり驚いたりしながら、最後はちゃんと落ちもついて昔話調にスッキリまとまった語り口が、とても気持ちがよかった。