ハイペリオンの没落 上・下

Dan Simmonsが1990年に発表したThe Fall of Hyperionの翻訳本。前作『ハイペリオン/Hyperion』で、宇宙船に乗って惑星ハイペリオンへ、首都キーツへ、時観城へ、ついに「時間の墓標」に到着した6人の巡礼者の男女とレイチェル、そして行方不明になった森霊修道士ヘット・マスティーン。一人称の語り手が現われて、その「ぼく」を通して巡礼者たちがシュライクと対面する惑星ハイペリオンの様子と、大宇宙を舞台にした連邦とアウスター、「テクノコア」の戦いが描かれる。本当の敵は誰か?シュライクは何者で、どこからきて、どこへ行くのか?アウスターと「コア」の狙いは?精神的存在であるらしい「コア」は一体どこにいるのか?

うおおおお、上下巻を1日で読了!昼間からずっと読んでいたら読み終わってしまった!!(≧▽≦)これはまさしく至福!
今になって思うと、やっぱり前巻の『ハイペリオン』は、話が分断されているせいで時間がかかったんだな。読んでいるときはそんなこと思わなかったんだけど、確かに統一したひとりの語り手がいるというのは大きい。それで、「ぼく」はどうなったんだっけ?『エンディミオン』にも出てくるといいな・・・。

巡礼者サイドでは『ハイペリオン』で語られた6人の未完の物語が、ひとつひとつ進展したり、解決したりする。巡礼者がどんどんシュライクに捕らえられて行った時はショックで呆然としたけど、話が終わってみれば本当に「死んだ」のはカッサードとマスティーンの2人だけなのね。キッチリそれぞれの未来が描かれる所で終わるけど、それは初めから計算ずくだった結末という気もする。
全てを超越した語り手の「ぼく」の冷めた部分と、対照的に熱いところが気に入ったので、「ぼく」の行動していたらどんどん話に呑まれて、勢い良く終わりまで読んでしまった。読んでいる時は、複雑でとてもこれ1作で終われるとは思えなかったが、巡礼者のいきさつと今回の戦争はこれで一通り片がついた。『ハイペリオン』の物語は、今回の結末から約300年のインターバルをはさんで次の『エンディミオン』に引き継がれるのだそうだ。

■登場人物
M・ジョセフ・セヴァーン ・・・・・・・「ぼく」 男
CEO マイナ・グラッドストーン・・・連邦の最高指導者 女
リイ・ハント       ・・・・・・・グラッドストーンの腹心の側近 男

ルナール・ホイト  ・・・・・・・「司祭」男
フィドマーン・カッサード  ・・「兵士」男
マーティン・サイリーナス  ・・「詩人」男
ソル・ワイントラウブ  ・・・・・「学者」男
 *レイチェル  ・・・・・・・・・・・・ソルの娘
M・ブローン・レイミア  ・・・・「探偵」女
?????   ・・・・・・・・「領事」男 名無し?
ヘット・マスティーン  ・・・・・巡礼者のひとり。途中で行方不明になる。 男

■内容紹介文(文庫より)
連邦の首星TC2から、色鮮やかな光条を描いて、FORCE無敵艦隊が出撃していく。めざすは謎の遺跡「時間の墓標」を擁する惑星ハイペリオン。宇宙の蛮族アウスターから人類連邦を守るための壮絶なる戦いの火蓋が、いままさに切って落とされようとしていた。いっぽうハイペリオンでは、連邦の密命を受けた七人の男女が、ついに「時間の墓標」に到着していた。長い旅路のはてに、その地で彼らを待ちうけていたのは…?『SFが読みたい!2001年版』が選ぶ90年代ベストSF第1位。ついに銀河を揺るがす戦いの火蓋は切られた。(上巻)
連邦の誇る無敵艦隊は、アウスターの大軍勢を前に苦戦をしいられていた。高度な予測能力をもつ独立AI群「テクノコア」の助言を信じ、連邦は対アウスター戦にもてる戦力のすべてをそそぎこむ。だがそのころ、惑星ハイペリオンを訪れた人々の眼前では、ついに「時間の墓標」が開き、驚くべき光景が展開されていた!はたして彼らの運命は?そして戦いの帰趨は?壮大な物語は、ここに驚異のクライマックスを迎える!英国SF協会賞・ローカス賞星雲賞受賞。(下巻)