Linnets and Valerians感想

母を亡くし、ついで父がエジプトへ行くことになったLinnet家の4人の子どもたち、ナン(12)、ロバート(10)、ティモシー(8)、ベッツィー(6)は、祖母の家にあずけられることになった。ところが4人は祖母とそりが合わず家出してしまい、不思議な糸に導かれるように近くの村に住む伯父の所に身を寄せた。父の一番上の兄だという伯父は男子校の校長先生だった人物で、4人は彼の家で暮らすようになる。英国の田園風景、明るい日差しの森と花の咲き乱れる庭を守る蜂たち。初めて経験する、穏やかで豊かな暮らしが続くある日、4人は村でレディ・アリシアという変わった女性に出会って・・・。

この本は、『赤毛のアン』とか『若草物語』と同じ系列の小説で、言ってみれば「なんでもないこと」を丁寧に描いた話だ。レディ・アリシアの謎(?)というドラマチックな筋は一応あるものの、短く言えば、それさえも含めて伯父の家&村での暮らしが延々と続くだけだったりする。念の入った風景描写と優しい空気が懐かしくて、まるできらきら光る木漏れ日の中を子どもたちが駆け回るような・・・。心が洗われるとってもいい本だった。今考えると、事前知識がゼロの状態で読めたのも良かったんだと思う。ご都合主義といわれようとも、こういう昔ながらの、風情あるハッピーエンドって私は大好き。とても楽しく読めた!

全体に「古き良き英国」という雰囲気が漂っていて、この本の初版は1964年だが時代設定はもっと古そうだ。伯父の4人きょうだいへの教育や、家での手伝い・仕事が当たり前のように男女で違いがあったり、エピローグで語られる将来についても、ごく当然のように男女差があったりするのは、今の目で見れば確かに古い。古いけれど、それに違和感を持ったり腹が立ったりはしなかったのは、この本の力だと思う。宝石のようにきれいな本なのに、未翻訳なので読んだことのある人が殆ど居ないという今の状況は、独り占めしてる気分でゾクゾクするほど素敵。(笑) この人の本はもっと読んでみたい。