まほろ市の殺人 秋:闇雲A子と憂鬱刑事

<STORY>
「早く乗せて!」非番の刑事、天城憂の車に、女性が乗り込んで来た。真幌市在住の有名なミステリー作家闇雲A子だった。この春から十一件も連続して殺人事件が発生している。その「真幌キラー」をA子は追っていたのだ。死体の耳が焼かれ、傍には必ず何かが置かれている。犬のぬいぐるみ、闘牛の置物、角材…。真幌市を恐怖のどん底に陥れる殺人鬼の正体とは?

<REVIEW>
う〜〜ん。この話は好きじゃなかった。ミステリーというのは、殺人をテーマにしているだけに、こういうスッキリしない冷たい終わり方だと気分が悪くなってしょうがない。主役の天城憂刑事は、キャラクターも立場・状況もいかにも「ゆううつ」で、読んでいるうちに私まで憂鬱になってしまった。彼を正反対のA子というキャラクターと一緒に置くおかしさというのはわかるけれど、そのA子も全然魅力的に見えないし。読みながら、この作者はかなりの皮肉屋か厭世家じゃないかと思ったくらい。
100ページちょっとの短い話なので問題なく読みきれたけれど、長編だったら読了できなかったかもしれない。もちろん、否定の感情とはいえ、こういう強い感想が出てきたというのはすごいことだ。パンチの効いた、独特の主張を持った話だから、そういう意味ではうっすら霞がかかったようなやわらかな「春」よりも、ずっと強烈な話だったと言える。