まほろ市の殺人 夏:夏に散る花

<夏・STORY>
真幌市に住む新人作家・君村義一の許へファンレターが出版社から転送されてきた。送り主の住所も同じ真幌。執筆に行き詰まっていた君村は、四方田みずきとのメールのやり取りで意欲もわき始め、まだ見ぬ彼女に恋をした。一度は彼女に会うことができたものの、彼女との連絡は突如とぎれ・・・。そして、思いを募らせる君村がとった行動が、思いがけない事件を呼ぶ!

<REVIEW>
この話もヒタヒタとした迫力があってなかなか良かった。春よりも夏の方が好き。ミステリーへのこの答えはちょっと反則ではないかと思うが、メインテーマは恋愛の方にあるようなので良いのだろう。トリック重視の本格ものとは一味違って、テーマはラブストーリー。売れない作家の主人公が、結果的に直接事件を引き起こしてしまうという話だ。タイトルにある「花」の使い方が上手だと思った。私の場合、こういう「殺人」の背景にある感情そのものを描いた話は、どっしりした長編では気が重くなってしまってダメ。だけど、この長さの中編ならまったく抵抗がなく楽しめた。

このシリーズって、どれも中編だから短いのよね〜。字の大きい100ページちょっとの文庫本なんて、昼休みにボーっと読んでたらもうそれで読み終わってしまう。(^^;長編ほどの複雑さや深みはないとしても、短編と違ってきっちり起承転結があるから「読んだ!」って気分になれて楽しかった。