堪忍箱

<収録作品・内容紹介>
『堪忍箱』『かどわかし』『敵持ち』『十六夜髑髏』『お墓の下まで』『謀りごと』『てんびんばかり』『砂村新田
蓋を開けたら最後、この近江屋に災いが降りかかる・・・・。決して中を見てはいけないというその黒い文箱には、喪の花・木蓮の細工が施してあった。物言わぬ箱が、しだいに人々の心をざわめかせ、呑み込んでいく表題作。なさぬ仲の親と子が互いに秘密を抱えながらも、寄り添い、いたわり合う「お墓の下まで」。名もなき人たちの日常にひそむ一瞬の闇。人生の苦さが沁みる時代小説8編。

<感想>
前2冊に比べるとどうも印象が薄いんだけど、小粒のように良くまとまった短編集ではあった。話の間に繋がりはなくて本当の短編。ある人が死んだことによって、周りの人の心に波が立つ、人の心の一瞬の闇を描く、という種類の話が多かった気がする。印象に残ったのは、最後の『砂村新田』という話。主人公のお春が可愛くて、短い話の中で成長していくのが読んでいて面白かった。初めて女中奉公に出た日に不安がっているシーンから始まって、最後の方ではしっかり「あたしはちゃんと働ける、一人前の女なのだから。」と言うし。