陰陽師:鳳凰の巻

平安京の暗闇に蠢く魑魅魍魎に、若き陰陽師安倍晴明と朋友の源博雅が敢然と立ち向かう大好評シリーズ第四弾。今回は、晴明が好敵手でもある蘆屋道満と、帝の招きにより宮中で方術比べをすることになった一件を描く「晴明、道満と覆物の中身を占うこと」や、これまた道満が絡む「泰山府君祭」他五篇。

1時間ちょっとで、あっという間に読んでしまった。このシリーズは何冊も読んでくると、一種ワンパターンの快感というのがある。必ず同じように清明の家で飲むシーンから始まって、
  「ゆこう」
  「ゆこう」 
  そういうことになった。
・・・と受けて、事件にあって終わる。それから外れる話はひとつもないという・・・そのワンパターンが読んでいて快感だとも言えるし、ひとつひとつの事件は意表を突かれる事も多いのでつい読んでしまうというわけ。

泰山府君
偉い坊さんが事件を起こす話。この話は印象的なシーンがいくつもあったので、気に入った話のひとつ。泰山府君というのは、地獄の閻魔大王のような、死者の魂の善悪を裁く神のこと。仮死状態の坊さんへ、清明が行う「治療」が強烈だった。

◎青鬼の背に乗りたる男の譚
女の体から鬼が生まれる話。タイトルどおりのことが起きるシーンが印象に残った。鬼がかわいそう、というかそれを導いた男が最低。最後に「ああ、わたしは、なんということをしてしまったのでしょう」って、全て終わってから何を寝ぼけたことを!遅いって!

◎月見草
和歌の解釈について起きた、実害の無い幽霊譚。風景描写、和歌や漢詩の出し方やタイミング等が、思いっきり力が入っている。話自体は別にどうということもなくて、あまり印象に残らなかった。だから何?みたいな小さな事件の話。

◎漢神道
夢の中の出来事のはずなのに、実際に怪我をしてしまった男の話。夢の中の出来事が怖い!けど、終わり方はちょっと拍子抜け。だってこれは逆恨みでしょう?

◎手をひく人
霊に手を引かれて、死にかけた夫婦の話。話のアイデアが面白い。なるほどね〜、それで手を引いたのか・・・。

◎髑髏譚
ある寺の和尚が、奇怪な夢を見る話。この本で、一番気に入ったのがこの話。夢というのが当然悪夢なのだけど、それがまたすごいこと!真相もかなりビックリしたし、色んな意味で個人的ヒット作。

清明、道満と覆物の中身を占うこと
タイトルそのまま、清明と道満が公開で力比べをする話。ただそれだけの、遊びに満ちた一編。2人がそれぞれ方術を使って幻影を見せるシーンは面白かった。そして最後に、箱の中身当て対決の裏にあった、小さなたくらみの真相が・・・。