夜市

<内容(「BOOK」データベースより)>
妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。

どこだったかは忘れたけど、「日本ホラー小説大賞受賞作」という宣伝文句を見て、印象的なタイトルだったのでメモして本屋で買ってきた。「夜市」で「よいち」と読ませるらしい。驚くほど面白かった。面白かったというより、私の好みだった・・・かな。中編が2つ入った本で、適度な長さで読みやすいのも良かった。初めて読む作家で、全然、今までまったく聞いたこともなかった名前!不思議に思ったら、これがデビュー作で単行本が2005年出版だそうだ。どうりで・・・・私、その頃から本を読まなくなってたから、最新の情報が入ってなかったんだな。

表題作の「夜市」は異世界に迷い込む風情の中編で、夜にどこかで開かれる市の話。一度入ると、何か買わないと出られない。思いだしてみると、私はずっと今市子の『百鬼夜行抄』の絵柄で読んでいたみたい。布を広げて品物を並べてあるお店、暗い道端に下がった小さな提灯。一つ目ゴリラの刀剣屋。文章が映像的というか、漫画的に浮かびやすい感じだったのかな。
二つ目の中編の『風の古道』も良かった! 実は私はこっちの方が「夜市」よりもっと気に入った。二人の少年が、異世界にある不思議な神々の道を歩く話。
短くて読みやすいし、文庫だから安いし。ちょっと読んでみるには本当に丁度よかった。