The Martian Chronicles読了

人類は火星へ火星へと寄せ波のように押しよせ、やがて地球人の村ができ、町ができ、哀れな火星人たちは、その廃墟からしだいに姿を消していった……。精神を欠いた物質文明の発達に厳しい批判を浴びせる、ポエジイとモラルの作家が、二十六篇のオムニバス短篇で謳いあげた、SF文学史上に輝く永遠の記念塔!

すごく良かった!最後のシーンではざわざわっと鳥肌が立ってしまった。どう良かったか語ろうとすると、言葉が足りなくて「話の呼吸と短編独特の切れ味がすばらしい」なんて抽象的な表現になってしまうけれど、この本は本当に、すごく気に入った!大好きな本に出会うと、いつもどこがいいのか表現できなくて歯がゆい思いをするけど、今もまたそういう気持ち。

内容は、1話は1ページから10ページ程度でJanuary 1999 Rocket Summerのように年月とタイトルのついた26の短編が寄り集まって出来ていて、全体で1999年から2026年までの火星の歴史を語っているわけだ。地球人類が火星にやってきて定着していく様子が、キャラクターを変えて色々な角度から描かれる。

・・・というといかにもSFっぽく聞こえるけれど、描かれる世界にはSF的な小道具がほとんど出てこなくて、実はかなりアナログな世界だ。出てくる機械というとロケットとロボットくらいで、それもメカニックな解説は一切無し。突然火星に降り立つところから話が始まるので、「別世界」という意味では完全にファンタジーだと思ったくらい。本全体を貫く主要キャラクターはいるものの、話自体は火星や地球のあちこちに飛ぶ。よくつかめなかった話もあったけど、大体は分かりやすかった。全体を貫くストーリーがはっきりしているせいで、今までに読んだ同作者の本、The Halloween TreeやDandelion Wineよりも分かりやすかったように思う。もちろん、詩的でリズミカルな英語と、豊かなイメージ(映像)は同じだったが。