陰陽師

平安時代。闇が闇として残り、人も、鬼も、もののけも、同じ都の暗がりの中に、時には同じ屋根の下に、息をひそめて一緒に住んでいた。安倍清明従四位下大内裏陰陽寮に属する陰陽師。死霊や生霊、鬼などの妖しのもの相手に、親友の源博雅と力を合わせこの世ならぬ不可思議な難事件にいどみ、あざやかに解決する。

夢枕獏版『日本昔ばなし』。6つの短編を収録した短編集で、安倍清明という陰陽師とその親友の博雅を通して、平安の京の都の光と闇を描いている。「むかしむかし・・・」と語る声が聞こえてきそうな古風な語り口と、どこかでお馴染みの雰囲気はもう、これぞまさに昔話!という感じ。話によってホラーがかっていたり、スプラッタ気味だったり、気色悪かったり、微妙にエッチだったりするのがアクセントになっていて退屈しなかった。清明と博雅という統一の主役キャラがいるせいで話に入りやすかったのもあって、サラサラと最後まで読めた。

<収録作品タイトル、冒頭の一文&ひとこと感想>
◎「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」奇妙な男の話をする。
『今昔物語』を何度も引用したり、冒頭で時代背景を念入りに説明したりして、すごく力が入っていると思った。・・・と思ったら、この話は実際に『今昔物語』の中の同名の話のリメイク版だそうな。・・・どうりで。(^^;

◎「梔子の女」土御門大路にある安倍清明の屋敷を、源博雅が訪ねたのは、皐月も半ばに入ってからである。
梔子(くちなし)、口無し。上手い!(^-^ヾ わりと小さな事件で、読み終わった時清明の言葉に「なるほど」と納得してしまった。

◎「黒川主」魂が透きとおるほどの、美しい夜であった。
悪い印象ではないけど、ある意味ものすっごく気色悪い。気分が悪くならなかったのは、描写される映像がキレイだからか?このストーリーをグログロのホラーでやったら、真面目に怖くて気色悪いだろうけど。

◎「蟇」 span style="font-style:italic;">「―すごいな」 博雅は、さきほどから、酒をひと口飲んでは溜め息をつき、感に堪えない声をあげている。
ひき=ひきがえる
終わりから4行目を読んで目が点になった。それで解決なんですか・・・・(^^; いずれ再登場するとか?

◎「鬼のみちゆき」それを、最初に見たのは、赤髪の犬麻呂と呼ばれる盗人であった。
鬼がかわいそう。「ひと夜のこととて、今は忘れていた」って、忘れるなよおいーっ!(爆) 結局、この事件は全部アンタのせいだろうが!

◎「白比丘尼雪が、降っている。柔らかな雪であった。風はない。ただ。天から雪が降りてくるだけである。
ぎゃーーっ!!ちょっと待ってよ!こ、これは・・・。白比丘尼って・・・!Σ( ̄□ ̄;ひぃっ 冒頭の文章でわかるように、この話は特に描写が映像的だと思った。最初から最後まで!