The Clan of the Cave Bear

翻訳:ケーブ・ベアの一族 (上),(下)
紀元前約三万年、大地震で両親を失った新人クロマニヨンの子エイラは、旧人ネアンデルタールの部族に拾われ育てられることになった…。大いなる運命の下に生まれ、稀有な才能を秘めるエイラをめぐり、遥か太古の人々の、壮大な愛と冒険とロマンが展開。世界中の熱い注目を沿びる、ベストセラー小説。

面白かった。前半は百科事典に迷い込んだようでなかなか進まなかったが、後半になったらストーリーの力でぐいぐい引っぱられてあっという間に終わりまで行けた。前半で放り出さなくて本当に良かった・・・13・14章あたりが突然面白くなる境界線(特に英語で読む場合は前半は忍耐が必要かもしれないけど、もうダメだと思ってもこの辺まで頑張れば読了できます)。これは本当は私の趣味からは外れた本なのに、勢いで最後まで読まされてしまった。
 
主役はエイラという少女で、1巻のこの本は5歳で拾われてから、1人で生きていけるようになるまでの少女時代を描いている。彼女を通して古代世界を描くのが目的、という感じ。エイラの一人称のシーンでも彼女に密着しないで、遥か上のほうから旧石器時代の社会を俯瞰している。読んでいると自然に古代の生活場面が浮かんでくるのはなかなか面白い読書体験だったけど、キャラクターや感情の描写が少ないのがもの足りない。エイラが泣いたり嘆いたりする所などを「涙を流した」の一言でアッサリ終わらせていたりする。起こる出来事(事件)や人間関係はわりと紋切り型で、どこかで聞いたような話が切り張りしてある感じ。「おしん」で「醜いあひるの子」と言ったら、本当にそのままの話だった!(^^;

発想が新鮮で、話が面白くて、続きも読みたいと思うんだからやっぱりこれは面白かったんだろう。絶賛する気にはなれないのは、百科事典状態がキツかったのと、敵のキャラを薄っぺらく感じたから。敵だってそれなりにすごい人じゃないと、と思うのはわがままだろうか。とりあえず「おしん」が好きな人は読む価値あり(私は謂われないいじめは苦手だ)。