Wolf Tower : Claidi Journals 1

16歳のClaidiは、生まれてからずっとThe HouseでLady Jade Leaf(LJL)の侍女をしている。LJLはわがままで残酷な女性で、いじめの標的にされながらも、持ち前の機転とクールさでなんとか乗り切ってきたClaidi。ある日、一生外に出ることの無いThe Houseの住人が驚くような事件が起きる。外の人間、壁の外にも世界があることの生き証人がやって来た。牢に閉じ込められてしまったその王子をClaidiは助けようとするのだが・・・・。

なかなかおもしろかった。ファンタジーというより、中央アジアあたりを舞台にしたロードムービーを見ている気分だった。ストーリーは大半がClaidiと腰抜けボケボケ王子の逃避行を描いたもので、まずThe Houseを逃げ出したはいいけれど水も食糧も少なくて大変だとか、誰々に助けてもらって云々というシーンが散文的に淡々と続く。Claidiがかなりクールな性格なので語りがひたすら平坦だけれど、よく読んでみると内容は結構スゴイ。

例えばワニ族。ワニと生活を共にして、ワニに乗って移動したり、幼児の頃から河でワニと一緒に泳いだりする一族・・・。ヒツジ族は、ヒツジと生活を共にして、ヒツジを絶対殺さず、言葉は全部メーメーメーメー(とClaidiには聞こえる)。羽の何とか族は、羽をつけて崖から飛ぶ(そして足の骨を折る)というお祭りをしたり・・・。そういうとても奇妙な人々の間を、Claidiと王子が旅をするというわけだ。そのまま最後まで行くのかと思ったら、「目的地」に着いてからが呆れるほどの急展開!展開が早すぎて、アッサリ終わらせた印象が強いけれど、一応ストーリーにきちんと始末がついているので後味は悪くなかった。まぁ、Claidiの話はこの後もまだまだ続きがあることを考えると、この本の結末は「始まりの終わり」かもしれないが。

それから、基本的なことだけれど、シリーズタイトルのClaidi Journalsというのは、「Claidiの日記」という意味。表紙でClaidiが胸の所に抱えている紺色の本がその日記帳で、話の中には日付はないが、一貫してClaidiの視点で出来事がつづられる。「ずっと書けなかったのは、ペンのインクがなくなってしまったから。○×に貰うのを忘れてしまって」など。