樹上のゆりかご

ハッシャバイ、ベイビィ、樹のてっぺん 風が吹いたら ゆりかご揺れる 枝が折れたら ゆりかご落ちる 赤ちゃん、ゆりかご、もろともに

男子校のバンカラの伝統が残る都立辰川高校に入学した上田ヒロミは、女子を疎外する居心地の悪さを学校生活の中で感じるようになっていた。そんな折り、合唱コンクールで指揮をしたカリスマ女生徒が出現し、次々と事件が…。

「そうそう、マザーグースの子守歌。怖い歌だと思っていた? 私も、むかしは怖くなかった。小さな子どもは、べつにこれを怖いと思わないのよ。(p.276)」

同著者のライトファンタジー『これは王国のかぎ』と同じ人物を主人公にした学園小説。春の合唱祭の時のふとしたキッカケから高校の生徒会執行部として学校の行事運営に関わることになり、秋の文化祭、体育祭と例年どおりに企画実行していくうちに、例年にない事件が起こり始める、という筋。

おもしろかった。これだけ深くて広いテーマを、純然たる学園小説で書いてしまったところがすごい。私はヒロミと有理さんがおしゃべりするシーンが好きで、テーマは深遠なのに分かりやすくてとても興味深かった。そのサロメ罪と罰という話題が事件にどう関係があるのかと思ったら、なんとまぁ!3章あたりで徐々に話が見えてきてからは、もう目がぐるっと裏返りそうだった。今回は図書館の本で読んだけど、新刊で買っても良いなと思っている。