Winter Solstice

翻訳≫冬至まで
内容(「BOOK」データベースより)
南英に住む62歳の元女優エルフリーダ。教会のオルガン奏者オスカーの家族と親しくなるが、突然の悲劇が彼を襲う。エルフリーダは、立ち直れないオスカーのために、彼ゆかりの地スコットランドにともに旅立つことを決意する。
クリスマス間近のスコットランドが、世代の異なる孤独な五人を、一つ屋根の下に暖かく包みこむ。孤立と結びつき。一度手放した人生の糸をたぐりよせる人々が、磁石に吸いよせられるように、北スコットランドの古い家で、ともに暮らしはじめた。邪魔者として不幸せな家庭を逃れ出てきた14歳のルーシー。ルーツへと向かうサム。傷心を癒すキャリー。悲哀に向き合うオスカーと寄り添うエルフリーダ。それぞれが自分本来の場所を探し求めて、新しい出発のときを迎える。一年で昼がいちばん短い日―冬至。信頼と癒し、生きる希望。家族愛。円熟の筆で静かに繰り広げられる物語のタペストリー。

今年4冊目のクリスマス本。この本はとてもおもしろかった!ロザムンド・ピルチャーは初めての作家で、読む前はよくあるハートウォーミングな癒し系の本だ軽く見ていたのだが、読みはじめたらどっぷりハマってしまった。客観的に見れば出来すぎのおとぎ話なのに、文章に筆力があるせいでしっかり読ませられてしまった。安易な展開に逃げずに真正面からキッチリ描かれた、本物の「心暖まる話」。大枚500ページ、ストーリー展開はゆっくりめなのに、1ページ無駄がない感じ・・・普通はどんなに面白い本でも中だるみしたり、退屈に感じるところがあるものだけど、この本は本当に最初から最後までずーっと面白かった。こんな本もあるんだな〜ととても驚いた。

ストーリーは、エルフリーダ、オスカー、キャリー、ルーシー、サムの5人の老若男女の視点が入れ替わりながら語られる。この5人の主要キャラを中心に、それを取り巻く人々もみんないい人ばかりで、傷ついた心をみんなで癒しあって、好循環を作り出して立ち直っていくような話。悲劇やとんでもない事件も起きるけれど、それさえも含めて、話は予想通りのところに落ち着いてホッと安心して終わる。とても素敵な本だった。

この本は、読むならばできればクリスマス前の12月、でなくても冬に読んで欲しい。雪に閉ざされたスコットランドでのクリスマス休暇、ツリーのデコレーション、パーティ、プレゼント、ミサ・・・というクリスマスのエピソードで出来上がっている話なので。