From the Dust Returned

From the Dust Returnedは、2001年秋に出版されたブラッドベリの最新長編。全体の作りはThe Martian Chroniclesと同じように、テーマに沿った短編のつらなりで出来ていて、今までに発表されたアメリカ中西部に隠れ住む魔物の一族を題材にした短編が収録されている。第20章The Travelerが一番古く、発表されたのは1945年だそうだ。
上の表紙イラストが、『アダムス・ファミリー』で有名な漫画家チャールズ・アダムスが1946年に短編『集会/Homecoming』のために描いたといういわくつきの絵だ(と結構前のSFマガジンのどこかに書いてあった)。翻訳本の表紙もこれと同じ絵だ。 『集会/Homecoming』はプロローグ+23章のこの本の、9章に同じタイトルで収録されている。

魔物の一族が題材ということで、実体があるような無いようなこの不死のものたちの体験談が、幽霊譚として延々と続く。舞台設定や脇役は話によってちがうが、主要キャラクターには一貫性があるので分かりやすい。一族に拾われた人間のTimothyという男の子のキャラクターが面白いと思った。不死の一族に育てられた人間、というと不健康に聞こえるけど、かなり普通の感覚を持っている様子。家族との間の会話には確かに感情が通っているし、Timothyの言うことはどれも鋭くて・・・Timothyはただの少年というより、何か別のものを代表した象徴的なキャラクターなのかもしれないと思った。

1章1章は短くて、切り離してみると軽くて取り留めがないものが多い。「恋がしたい」と思ったCecyが人間の少女に乗り移って操って恋人(候補)とダンスに出かけたり、(ハロウィンに)この魔物の一族の集会が行われたりしているうちに、少しずつ「終わり」に近づいていく。「万聖節前夜(Hallows Eve)」とか「10月の人々(October People)」とか「秋の人たち(Autumn People)」というキーワードが散りばめられているので、この本はやっぱりハロウィン本だ。10月に読んで良かったと思う。ブラッドベリの最近の本は死の匂いがするのが多いとは聞いていたけど、この本もある意味では死について延々と語っていると言えるかも。ブラッドベリの本で最高ではないにしても、かなり変わっていて不思議な本だった。