Something Wicked This Way Comes

翻訳:何かが道をやってくる
<内容紹介>
ある年の万聖節前夜(=ハロウィーンの夜)、ジムとウィルは、ともに13歳だった。そして彼らが一夜のうちにおとなになり、もはや永久に子供でなくなってしまったのは、その10月のある週のことだった。夜の町にやってきた闇のカーニバルは、その回転木馬の進行につれて、時間は現在から過去へ、過去から未来へと変わり、それと同時に魔女や恐竜が徘徊する悪夢のような世界が・・・・。SFの抒情詩人レイ・ブラッドベリが世に問う一大ファンタジー

すごく良かった!!とても素敵な本で、読み終わった時は最初に戻ってもう一度読みたいと思った。色々な要素がつまっているので、あらすじを書くのがとても難しい、というか不可能。ファンタジーというけどハロウィーンの闇を描いたホラーでもあるし、ジムとウィルの深い友情や、親子の関係がメインテーマとも言えるし、誘惑、老若と、生と死・・・そういうものが、叙情的で派手なキラキラした文章に乗って語られる。このブラッドベリの語り口は本当に独特の雰囲気がただよっている。ストーリーやイメージの豊かさにくわえて、英語のリズムがとても気持ち良くて、一気に読んでしまった。

一番素敵だったのは、ジムとウィルの深い友情というか愛情。最後の"Oh, Jim, Jim, We'll be pals forever."(p287)にはジ〜ンとしてしてしまった。それから、本気で怖い場面が結構あったのが印象的。特に42〜46章あたりの、Mr.Darkが2人を捕まえようとするところなどは、怪しい雰囲気と緊迫感がたっぷり!Mr.Darkの呼び声やジムとウィルの呼吸が伝わってくるようだった。
夜中にやって来たカーニバル、回転木馬に刺青男という、怪しげな生きものたちでいっぱいで、ハロウィーンの雰囲気もたっぷり。秋の読書にピッタリな本だった。ああ、面白かった!(^^)

プロローグの冒頭が、とても素敵だった。

Prologue
First of all, it was October, a rare month for boys. Not that all months aren't rare. But there be bad and good, as the pirates say. Take September, a bad month: school begins. Consider August, a good month: school hasn't begun yet. July, well, July's really fine: there's no chance in the world for school. June, no doubting it, June's best of all, for the school doors spring open wide and September's billion years away.


それから、タイトルは直訳すると「何か邪悪なものがやってくる」という意味だが、文中にシェイクスピアの『マクベス』の次のような部分が引用されている。

By the pricking of my thumbs
Something wicked this way comes.
  なんだか親指がずきずきするよ(虫の知らせだ)
  よくないことが起こるんだ
     −ウィリアム・シェイクスピア 『マクベス


ちなみに、このセリフの前半を取った『By the Pricking of My Thumbs / 親指のうずき』(アガサ・クリスティー)という本もある。