The Amazing Maurice and His Educated Rodents

翻訳>天才ネコモーリスとその仲間たち

内容:
ドイツの民話「ハーメルンの笛吹き男」をテーマにしたユーモアファンタジー
ネズミたちは魔法使いの大学のゴミを食べて、とつぜん知性化した。みずから"The Changelings"と名乗って人間の言葉を話し、独自の文字をつくりだし、人生(鼠生?)について語り合う深い知性をもった「教養あるネズミ族(Educated Rodents)」になった。同じとき同じように賢くなったという猫のモーリスと、町で拾った笛吹きぼうやKeithを仲間に、一行は協力して金をかせぎながら旅をしている。
猫のモーリスの計画はいつでも完璧だ。新しい町へ行くとまずネズミが大暴れして、ころよい時にモーリスとKeithがあらわれ、町の人たちにネズミ退治を申し出るという筋書き。ネズミと笛吹きの話は有名なので、たいていこの方法でうまくゆく。今回一行は次の町を最後に別れようと決めて、Bad Blintzという町にやってきた。ところが、Bad Blintzはなにか様子がおかしい。ただ金儲けのために来たはずの猫とネズミたちと少年は、いつのまにかBad Blintzの町を舞台にした事件に巻き込まれて行くことに・・・。2002年カーネギー賞受賞作品。

感想:
本国では新刊が出ると必ずベストセラーになるという、英国の国民的作家・テリー・プラチェットのディスクワールドシリーズの児童書である。大好きなデイヴィット・ワイアット氏の初版の表紙イラストと、「カーネギー賞受賞」の金看板に背中を押されて読んでみた。おもしろかった。
テリー・プラチェットは読みにくい、難しいと噂に聞いていたが、実際に読んでみたら言われている「難しい」というのは内容なんだとわかった。英語の文章そのものは読みやすくて、すごく直感的にダイレクトに入ってくる文章だったけど、内容にひねりがある。このシリーズの本はどれも英国風のブラックユーモアや、神話、伝説、文学作品などのパロディが散りばめられているそうで、元ネタを知らないと面白さがわからなくて意味不明になりそう。そういう意味で、本書は「ハーメルンの笛吹き男」をメインに、シンデレラやネズミの王さまの話などグリム童話のパロディが中心だから分かりやすかったと思う。ディスクワールドの知識とか文学的教養は必要なく、童話ネタの動物ものファンタジーとして単純に面白くて、読みながらかなり笑った。

冒頭から口の達者な猫のモーリスのマシンガントークにニヤニヤ。モーリスとネズミたちと、おっとりした笛吹きぼうや三者の掛け合いがコミカルでいい感じ。知性あるネズミたちの「ネズミとは・・・」「生きるとは・・・」系の自問自答も、大真面目にやってるあたり、笑っちゃ悪いけど可笑しくて可笑しくて。そもそも、ネズミの名前がみんな変でおっかしい!(缶などの表示から音が気に入ったものを名前にしているから、みんな名前としてはどこか変) それから"Bad Blintz"のBlintz(ブリンツ)はお菓子の名前でもあるそうだから、この町の名前そのものがすでにネタじゃないかと思う。