Johnny and the Dead : Johnny Maxwell Story 2

翻訳:ゴースト・パラダイス
内容:
なぜ死者の姿が見えるようになってしまったのか。ジョニーにはそれがよくわからない。オルダーマンはこういう。
  ――それはきみが見まいとする努力を怠っておるからだ。
ジョニーにはなぜか幽霊が見える。ロンドンの街はずれのうらさびれた墓地が土地開発会社に買収され、死者たちは追いだされる強迫観念でパニックに。墓地を救うため、ジョニーたち少年四人組のハチャメチャな活躍が始まる。やがてハロウィンの夜がやってきて…。パロディと切なさに満ちたゴースト・ストーリー。

感想:
1作目のコンピューターゲームの話に続いて、「ジョニー・マックスウェル3部作」の2作目の本書はハロウィンの季節と幽霊の話。ジョニーは死者の姿が見える。幽霊、というと彼らは怒るのだが、とにかく見えてしまうものはしかたがない。街はずれのいつも静かな墓地がつぶされて、新しくビルが建つことになり、死者たちはパニックに。死者たちに泣きつかれたジョニーは、おなじみの友人たちWobbler、Yo-less、Bigmacと、なんとか墓地を救おうと大奮闘。やがてそれは町の人々へと波及していく。死者が見えるのはジョニーひとりだけれど、折しも季節は「死者のまつり」のハロウィーン万聖節前夜に奇跡が起きる・・・。

おもしろかった。このジョニー・マックスウェルのシリーズは肩の力が抜けたところがいいね。
ストーリーは上に書いたとおりだけど、主な内容はジョニーたち少年4人組の掛合い漫才のような弾みっぱなしの会話、いつも一言多い悪ガキどもの活躍が主体。文章は英国、英語に関するジョーク、パロディの連続で出来あがっている。こういうのは日本人一般には受けないと思うけど、私はものすっごく楽しみました。この肩の力の抜けた、マシンガンのように勢いよく笑いが連続して出てくるところがイイ! もうニヤニヤ笑いっぱなし。ページターナー、エンターテイメント万歳!
翻訳本も合わせて読んでみた。ジョークの部分などかなり頑張ってるけど、やっぱり日本語でこの面白さを表現するのはなかなか難しいらしい・・・。

気に入ってるのは、the dead(死者たち)はghost(幽霊)と呼ばれるのが嫌いだ、とジョニーが話す部分。

"Ghosts" (Yo-less.)
"No-oo, they don't like being called ghosts. It upsets them, for some reason. They're just ... dead. I suppose it's like not calling people handicapped or backward." (Johnny)
"Politically Correct. I read about that." (Yo-less)
"You mean they want to be called post-senior citizens." (Wobbler)
"Breathily challenged" (Yo-less)
"Vertically disadvantaged"(Wobbler) ・・・

ポリティカリー・コレクトとは「政治的に公正な」「差別・偏見を排除しようとした」。童話や昔話を"政治的に正しく"書きなおしたPolitically Correct Bedtime Stories(政治的に正しいおとぎ話)なんか有名だけど、とにかくこれは
 「視覚障害者」を "optically challenged"(視覚的に不自由な人)
 「太った人」を "horizontally challenged"(水平方向に困難を背負った人)
 「背が低い人」を "vertically challenged"(垂直方向に困難を背負った人)

と言ったりする。これと同じ発想で、ここでは「幽霊」の代わりに"breathily challenged"(呼吸が不自由な人)、"vertically disadvantaged"(垂直方向に不便をともなう人)なんて表現が出てきたわけだ。こうして解説すると面白くも何ともなくなってしまうけど、読んだ時はケラケラ笑えたんだ〜。この後、続いて
「垂直方向に不便をともなう? 何、背が低いってこと?」
「埋められてるから。」
・・・とゾンビの話になり、ゾンビはどうしてできるかから、ブードゥー教の話へと延々と話が転がっていくのだ。おもしろいなぁ。どうやったらこんなにテンションの高い会話文が作れるんだろう。